2024年「かしの木」6月号

カ ト リ ッ ク信 者 の処 方 箋

詩編を祈る、詩編で祈る

 

 

主任司祭  矢 野 𠮷 久

 

「主は羊飼い、わたしには何も欠けることがない。」 この言葉で詩編 23 は始まります。

牧歌的な詩、作者は浮き沈みのはげしい人生の中で、自分を羊に、また敵に追われる旅人にたとえ、羊をとことん世話する羊飼いのような神と共にあることへの信頼、難を逃れたことへの喜びを歌います。

 

この詩編の中で私が特に大切にする言葉は 4 節です。「死の陰の谷を行くときもわたしはわざわいを恐れない。あなたがわたしと共にいて下さる。あなたのムチ、あなたの杖それがわたしを力づける。」死の陰の谷とは、人生のとんでもない危険のことでしょう。

 

私がカトリックの男子校で教壇に立っていた時、生徒にこの詩編を、ことに 4 節を語りました。彼らは中学生や高校生です。人生のことが未だわからず未知です。未来は常に不確実、何が彼らの前途に待ち構えているか予見することはできません。人生の途上で国難や危険に出会った時この詩編の 4 節を思い出してほしいと思って。「どんな恐ろしいことが起こっても神様は共に居て下さる。私の側に居て下さる」と。カトリック学校で学んだ者は聖書の他の個所は忘れても詩編 23の 4 節だけは忘れないで!これが私の願いでした。教育は「記憶の財産」を若い人に与えるものです。今理解出来なくても彼らが危機的状況になった時によみがえり支えるものです。

信者の皆さんどうか詩編に親しみ祈ってゆきましょう。ことに詩編 23 を。

東京教区の佐久間神父様(故人)がこの詩編を子どものために、こんなふうに作り変えて下さいました。

 

神さまは ひつじかい。

だったら わたしは 小さなひつじ。

神さまは わたしを

いつもいっしょに つれてってくださる。

だから こわいものなんか なんにもない。

神さまと いっしょに

 

わたしは 歩く。

 

至光社 『詩編』

 

p.s.

ハロルド・クシュナー(ユダヤ教のラビ)の『主はわれらの牧者』(サンパウロ)という本があり詩編 23 をよく理解出来ます。興味のある方は主任司祭にお申し出下さい。